次なる税理士法改正に向けて ②

 up2016年12月01日

税理士業務の歴史、現在、そして今後

渋谷部会 倉林 倭男

税理士業務とは税理士法2条1項に規定された業務をいう。税理士法は昭和26年に税務代理士法改正の動きの中で、税務代理士法を廃止し、新たに税理士法(以下「法」という。)として成立した。

この時の法2条は「税理士は、他人の求に応じ、所得税、法人税、相続税、富裕税、附加価値税、市町村民税、固定資産税、事業税、特別所得税又は政令で定めるその他の租税(略)に関し左に掲げる事務を行うことを業とする。(以下この業務を「税理士業務」という。)」とし、税理士業務の対象税目は形式的には限定列挙されていた。続いて一号に税務代理、二号に税務書類の作成、三号に税務相談が以下のように規定された。

一 申告、申請、再調査若しくは審査の請求又は異議の申立、過誤納税金の還付の請求その他の事項(訴訟を除く。)につき代理すること。

二 申告書、申請書、請求書その他税務官公署(税関官署を除く。以下同じ。)に提出する書類を作成すること。

三 第一号に規定する事項につき相談に応ずること。

また法52条に「税理士でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除き、税理士業務を行ってはならない。」と規定された。

その後昭和55年法改正において、法2条1項は「税理士は、他人の求めに応じ、租税(略)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。」と改正された。ここに税理士業務の対象税目は原則として全税目とされ、併せて以下のように業務範囲の明確化が図られた。

一 税務代理(税務官公署に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(・・略・・。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は、代行すること(略)をいう。

二 税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類で大蔵省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。

三 税務相談(税務官公署に対する申告等、第一号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(略)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。

その後平成14年に行政手続オンライン化法整備法によって、法2条1項2号「申告書等」に申告書等の作成に代えて電磁的記録を作成する場合におけるその電磁的記録を含むことが追加された。

税理士業務(法2条1項業務)とは、税務代理、税務書類の作成、税務相談と、単純に受け取ってはならない。先の下線部分(筆者)が示すように「税務官公署に対する申告等」が常に付いて回る、即ち申告等、申告書等の作成が前提なのである。税務官公署に対する申告等、提出を前提とした申告書等の作成に関わらない税務書類作成、税務相談は税理士業務の外にあると考えられる。

この法2条及び52条から業務独占が導かれるが、有償、無償については明確にされていない。

しかし、昭和24年「暴行税務代理士法違反被告事件」最高裁大法廷において、税務代理業を行いたる者について、報酬等の有無は問わないと判示しており、昭和27年国税庁長官発遣の「税理士法基本通達」で、「業とする」とは、当該事務を反復継続して行い、又は反復継続して行う意思をもって行うことをいい、必ずしも有償であることを要しないとされている。日税連、国税庁は、税理士業務は高い公共性を有するため、無償独占という強い規制で守られているというが、本当に税理士にとって、また、国民、納税者にとって、無償独占は必要なのであろうか。必要なのは課税庁側との考え方もある。

税理士法改正が一つの大きな課題を乗り越えた形となっている今、新たな法改正を模索するのなら、無償独占にも焦点を合わせてみてはいかがであろうか。有償独占、独占業務の範囲、名称独占などの論点について、これからの税理士制度を担う方々と議論してみたいものである。

以上